歳をとっても脳は集中力を取り戻せる:前編
「若いころに比べて集中力が落ちたな、記憶力が落ちたな」と感じていらっしゃる方は多いことと思います。
「幼いころには恐竜図鑑を眺めてたくさん恐竜の名前を覚えたのに、大人になったらすっかり新しい知識が覚えられなくなった」、「小学校のころにはさして勉強せずともテスト成績は良かったが、大人になってからは資格試験の勉強などで知識が身につかない」という類の経験を誰もがお持ちのことでしょう。
たしかに、言語の学習や丸暗記が典型的ですが、何らかの知識を、若いときのように乾いたスポンジが水を吸収するがごとく蓄える、といったことは難しくなると考えられます。
しかし、考えなおしてみれば、大人になってから接する情報量は、小学生など子どもの頃に接する情報量とは比較にならないくらい多いものです。
小学生や中学生のころは、一篇の短編小説の理解のために何時間もの授業時間を費やしました。しかし、大学生や社会人になったら、学業や仕事のために日々膨大な量の文書を読みこなす必要が出てきます。よほどの天才でなければ、それらの情報を隅々まで覚えておくことは不可能でしょう。
なので、歳を重ねることで記憶力が落ちるのは確かにそうかもしれませんが、接する情報量が格段に違うのですから、覚えられないことそのものを悩むのは生産的ではないですし、精神衛生上も良くないのではないかと思います。
問題は、集中力や意欲が落ちてしまうことです。
日々接する新たな情報を消化しきれなかったり、新しいことが覚えられない、といった感覚を持つことで、自己効力感が削がれてしまえば、新たなことにチャレンジしようという気力が薄れてしまいます。
意欲が落ちてしまえば、新たなチャレンジが減ってしまいますし、取り組むべき仕事や作業への集中力も落ちてしまいます。
このことが、さらに「今の自分は、過去の自分に比べて能力が落ちてしまった」という良くない自己イメージの固着につながってしまう可能性があるからです。
(後編につづく)