加齢による脳波の変化
これまでの研究から、加齢により、脳波のパワーは小さくなり、背景活動の周波数も遅くなること、また、加齢によって、P300の振幅は小さくなり、潜時は大きくなることが知られています。
しかし、normal agingにおいてEEGとERPの測度の間の統計的な関係性を示した文献は存在しませんでした(それらは個別に研究されていたり、そもそも計測手法が異なっていたりすることがその理由の一部であると考えられます)。
今回紹介する研究(Study 2)では、EEGとERPの関係について調べています。
参加者は120人。20代、30代、40代、50代、60代、70代以上(80歳以上を含む)にそれぞれ男女10人ずつで計120名です。
EEGパワーは、閉眼、開眼の両方でデルタ、シータ、アルファ、ベータの各周波数帯について測定しました。
ERPについては、P300成分を調べるために、視覚と聴覚について、simple discrimination taskを行わせました。
周波数帯ごとのパワーは、年齢の上昇とともにデルタ、シータ、アルファでパワーの減少が見られました(年齢とパワーは負の相関=年をとるとパワーが小さくなる)。(Fig. 5)
P300の振幅は、年齢の上昇とともに小さくなりました(年齢とP300の振幅は負の相関)。(Fig. 6)
P300の潜時は、年齢の上昇とともに長くなりました。(Fig. 6)
各周波数帯のEEGパワー(閉眼/開眼)とP300の振幅の相関も調べられています。
視覚刺激に対するP300の振幅は、開眼/閉眼のデルタ、シータ、アルファ1,2、ベータ1のパワーとの間に有意な相関がみられました。
年をとると、各種周波数帯のパワーが弱くなるとともにP300の振幅も小さくなるという相関が見られたというわけです。
参考文献:
Polich, J. (1997). On the relationship between EEG and P300: individual differences, aging, and ultradian rhythms. International journal of psychophysiology, 26(1-3), 299-317.