脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

心理学

疲労とアルファ帯域パワー

成人の過半数が感染しているヒトヘルペスウィルス(HHV)ですが、疲労によって活動が活発化し、唾液からHHV6が検出されることがわかっています。 疲労と脳活動について調べた研究の報告書の中に、「閉眼時に、アルファ波パワー密度は唾液中HHV-6レベルと負の…

創造的アイデアはいつ生まれるか?

標記の内容について、 マレイ・ゲル=マンの著書『クオークとジャガー』から 引用をします。 素粒子論の分野で顕著な業績を残したゲル=マンは、 創造性について、下記のようなことを言っています。 「第一に、私達は解決の得られない問題について、何日も、何…

神経心理学的症状について

網膜に傷害などが起きたりすると、視野に暗点が生じます。 つまりその部分の視野が欠けてしまうのです。 神経心理学の世界では、その欠けた視野の部分に その場には実際には存在しないモノが見えるように感じる という症状が起きることが知られています。 こ…

Russellの円環モデル

人はさまざまな感情を持ちますが、 それらの感情をいかに把握して整理すべきでしょうか? ラッセルの円環モデルはそのひとつです。 さまざまな感情を、 「覚醒度(arousal)」と「感情のポジネガ(valence)」の 2次元の軸で理解しようとするものです。 た…

ひらめくハト

人はひらめきます。 ひらめきは高度な知性の働きによって 引き起こされるように思われますが、 実はハトもひらめきます。 ハトがひらめく瞬間を御覧ください。 A Pigeon Solves the Classic Box-and-Banana Problem - YouTube ちなみに、心理学ではひらめき…

FC法は有効か?

facilitated communication(FC)法は、 重篤な脳障害を負ってしまった患者に対して 介助者が適切な方法を使うことで、 患者のコミュニケーション能力を補助できると謳う手法です。 ひと頃、日本でも話題になりました。 しかし、これについては、国際行動分…

イチョウ葉エキスはストループ課題の反応時間を上げる

家に転がっていた薄い冊子を開いてみたら、 イチョウ葉エキスがストループ課題の成績を向上させる、 という記述があったので、 原論文に当たろうと思って調べてみたところ、 アブストラクトしか読めませんでした。 それによると、 55歳以上の参加者に、一日1…

ラットも笑います

ヒトは笑います。 実はラットも笑うのです。 特に若いラットがよく笑うそうです。 なでてあげると50Hzの高さの音で キャッキャッキャと声を上げます。 下の動画にあるとおり、 実験者がラットをなでてあげると 実験者の手を追い求めるようになります。 そも…

情報:リフの心理的幸福感尺度(日本語版)

幸福感研究で使用されるRyffの心理的幸福感尺度(psychological wellbeing inventory, PWB)の日本語版ですが、 北村メンタルヘルス研究所 http://www.institute-of-mental-health.jp/thesis/thesis-03.html で入手できるようです。 PWI日本語版はメールにて…

Heider and Simmelの実験で使われた映像

今日は5:20に起きたのですが、この時間まで起きている上に明日も明け方に起きねばならず、ロングスリーパー派の自分としてはかなりつらいです。もはやゾンビシステムだけが独立して半分無意識で活動しています。そんなわけで、なんの脈絡もなく恐縮ですが今…

笑うのはヒトだけ?

私たちは、楽しいことうれしいことがあれば笑います。 ではヒト以外の動物は笑うのでしょうか? Pankseppらは、ラットが笑うことを学術誌に報告しました。 ラットの特に若いラットは仲間とじゃれあいます。 このとき、首筋のあたりをめがけてコンタクトをと…

有言実行か不言実行か

有言実行も不言実行もかっこいいですね。 どちらにしても何某かのことを実行するわけですから。 問題は、周囲の人たちに向かって自分が成したいことを宣言してからことにとりかかるべきか、あるいは決意については胸に秘め、誰にも言わない方がよいか、とい…

瞑想の効果:メモ

以前、瞑想の効果についての研究紹介をしたことがありますが、学術的にも古くからさまざまな研究が行われています。 1982年、ハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School)のHerbert Bensonらが、チベット仏教の修行僧たちが行うTum-mo(トゥムモ=he…

空海の記憶力と修行の関係:思いつきの仮説

昨年は高野山が開山1200年の記念の年であった。 開祖である空海は100日間にも及ぶ「虚空蔵求聞持法」の修行により、経典や外国語を短期間で習得できる記憶力を習得したと伝えられている。 (注:空海は若いときから様々な活躍をしているため、生まれつき記憶…

快/不快の香りに関する脳活動

心地よい(pleasantな)香りと、不快な(unpleasantな)香りに関する情報処理は脳のどの部位で行われているのでしょうか?Rollsらは、快の香り3種類、不快の香り3種類を用意し、fMRIの中に入っている参加者に嗅がせました。 快の香りはlinalyl acetate(花…

ついに、プリファレンスに関する脳波が発見か

モノなどに対する好みのことをpreferenceといいますが、これに関する神経基盤がわかると、ニューロマーケティングに革命が起こると考えられています。パッケージやCMを見たときの、あるいは試食・試飲したときの脳活動を測って、その人の好みがわかったら、…

幸福感と関連する脳活動(3)

つづきです。今回は、脳波データの取得についてと、主観評定との相関について紹介します。 安静時の脳波計測1分間を8回くり返してデータを取得します。4回は閉眼、4回は開眼条件でした。こうして取得した脳波のデータからアルファ帯域活動(8-13Hz)のパワー…

幸福感と関連する脳活動(2)

Urryらは主観的な幸福感(eudaimonic well-being, hedonic well-being, positive affect)と脳活動の関係を脳波計測をおこなって調べました。 まず、今回は、彼らが研究の中でおこなった主観的な幸福感の調べ方について説明します。 研究の中では、これらの…

幸福感と関連する脳活動(1)

接近・回避動機づけと前頭部非対称性の関係性については多くの研究があるにもかかわらず、幸福感の神経基盤を直接調べた研究は知られていませんでした。 Urryらは2004年に、この点に関する研究を行いました。84人の参加者(57〜60歳、右利き)に、eudaimonic…

子どもにとってシータは喜びに関連する脳活動である(らしい)

論文内の引用や、アブストラクトからの情報ですが、子どもにとってシータ帯域活動は喜びに関連する脳活動だと考える研究者たちがいるようです。 Kugler & Laub 1971によれば、4Hzの神経活動は、子ども(6ヵ月〜6歳)にとってpleasure-relatedな活動なのだそ…

プラシーボはプラシーボと明示しても効く

プラシーボを「プラシーボですよ」と明かした上で与えてもプラシーボ効果は生じるのでしょうか?ハーバード・メディカル・スクールの研究者たちがこの問題に取り組みました。参加者は偏頭痛を持つ66名の患者です。参加者たちには、偏頭痛が起きた時に服用す…

「眠気」は危ない

昨日はブログの更新をすっかり忘れていました。更新をお待ちいただいていたみなさまには失礼いたしました。本日は昨日の分と合わせて2回更新します。 広島で起きたトンネルでの自動車事故に関する新聞記事を読みました。 事故を起こしたトラックの運転手は…

子どもに映像コンテンツを見せたときの脳反応

子どもたちに映像を見せたときの脳活動に関する論文を探していたところ、 「話の展開に沿ってα波やθ波がピークを」見せた、とする論文を見つけました。 小学1年生2名、小学4年生1名を含む参加者に、ドラえもんやクレヨンしんちゃんの映画を見せたときの…

共感覚を見分ける実験

ある感覚刺激が本来引き起こす感覚以外の感覚を引き起こす現象を「共感覚」といいます。数字を見ると、黒い文字で印刷されているのに色がついているように感じる、というような現象が共感覚の例です。 あるモダリティの感覚入力が他のモダリティの感覚を引き…

コーヒーの味わいはマグカップの色から影響を受ける

マグカップの色がコーヒーの味わいに影響を与えるらしいというweb上の記事を読み、原論文にあたってみました。 実験1 透明のガラスのマグカップ、青色のマグカップ、白いマグカップの3種類のマグカップに温かいコーヒー(カフェラテ)を入れて参加者に飲ん…

メモ:非常に優れた自伝的記憶の持ち主

メモシリーズ、今回は優れた自伝的記憶の持ち主についてです。 ジル・プライス(Jill Price) 8歳の頃から、どの日についても、何曜日か、自分は何をしていたか、どのような重要な出来事が起きたかを詳細に記憶できるようになった。 プライス本人が、カリフ…

メモ:共感覚の有名人(3)

共感覚の有名人、3人目です。 タメット氏は、本も出版していて、テレビで紹介されたこともある有名な方ですね。 ダニエル・タメット(Daniel Paul Tammet) 共感覚のほか、アスペルガー症候群(=高機能自閉症)を抱えている。 非常に高度な記憶力を持ち、20…

メモ:共感覚の有名人(2)

シェレシェフスキーについては過去のエントリーでも取り上げました。 今回は、共感覚者としての可能性について述べます。 ソロモン・シェレシェフスキー(Solomon Veniaminovich Shereshevskii) 神経科学者のルリヤがシェレシェフスキーの能力について研究…

メモ:共感覚の有名人(1)

メモシリーズ、今回は共感覚の可能性のある有名人のご紹介です。 リチャード・ファインマン(Richard P. Feynman) 1965年、量子電磁力学の業績により、朝永振一郎やジュリアン・シュウィンガーとともにノーベル物理学賞を受賞した。 自伝的エッセイ「ご冗談…

Fmθの発見

Fmθ(えふえむしーた)として知られている、前頭正中部から取得されるシータ帯域活動の発見者は、石原務先生です。石原先生は1970年代からFmθという名称を使っていらっしゃるそうです。なので、発見から40年くらいは経っている、今や代表的な脳波測度のひと…